宮脇檀の別荘

宮脇檀による那須の別荘。1974年竣工のVILLA福村。鉄筋コンクリートと木造を組み合わせた、見る角度によっては大地に突き刺さるような建物です。

地上3階建て。延べ床面積は87.92㎡。700坪の敷地は整えられ、美しい林が囲む。

コンクリート打ち放しでは不具合があるため、建て主が屋根に鋼板を被せて覆ったそう。offessoの名称で一般公開も行われている、コンクリートの入口側と古民家が融合した建物です。

片持ち梁

建物はだいぶ傾いていたそうで、梁に鉄骨を入れ大掛かりに補強を行ったそうです。この片持ち梁で支えられている構造の木の部分にロープを巻き、ぐいぐいと引き起こしたのだそう。思い切った補強です。

以前は必要がなくなかったそうですが、エアコンは新たに設置したそうです。

宮脇檀建築の心地よさ

宮脇檀の心地の良い住宅空間が広がります。それは予想をはるかに超える心地よさで、ヒューマンモジュールの、足るを知るといった、サイズが感じられす。

テラスに置かれたチェア。ぽつんと吊られたペンダント。庭を眺めるためのアームチェアにオットマン。

日本由来の住宅らしく、石油ストーブを囲んで、上にはやかんが置かれています。

幸せな時が流れていた時代を、思い起こさせてくれる。とても不思議な空間でした。

アームチェアからは、こんな風に景色が広がります。

必要にして十分

使いやすい浅い引き出し。振りむけばほとんどその場でいろいろな事ができてしまう。大きなキッチンが主流です。しかし、それが幸せとは別のベクトルなのかも知れないと感じさせられました。

リビングと繋がるオープンキッチンは時代の先駆け。コンパクトな分、それ以上の発想です。

こういうミニマルが、時間や素材を大事にする目を開かせてくれる気がしました。

一箇所に立っているだけで、すべての物に手が届く。前日夕食を作られた方は、そう称しておいででした。

左に付いているのはレンジフードの角度を変える取手。自然の上昇気流で動力なしに煙を吸い込むんだそうです。必要な方向に視界が開け、風や光が通り抜ける。宮脇檀の設計らしい特徴が感じられます。それでこれほど暑くなる以前は、エアコンも必要なく暮らせていたそうです。

階段は旅館のような雰囲気です。北欧と日本が馴染みが良いというのがよくわかる設えです。

モダンな外観とは裏腹に、内部は温かみのあるコンパクトで使い勝手のよさそうな。時間の流れが変わる、部屋でした。

事務所棟

敷地内には事務所棟も併設されています。

イームズの家具が置かれ、なんかよい時が訪れそうな空間です。