世界的に有名なノーマン・フォスター卿による新作が発表されました。
カリモクケーススタディ
具体的な建築プロジェクトを通じて空間に最適な家具をデザインするケーススタディ。北欧建築の伝統と日本の美学や職人技に宿る感性をインスピレーションとしています。
その場に即したデザインをコンセプトに、ケース・バイ・ケースで家具を創る。2019年に芦沢氏がノームに声を掛け、ケーススタディプロジェクトが誕生しました。以来、ノームアーキテクツと芦沢啓治建築設計事務所の協業で進められてきました。
カリモクケーススタディについて記事でも触れさせていただいています。☞こちらから
今回の始まりは
意外にも、本人が直接カリモクの副社長にメールを送ったことが始まりだそうです。他にも誰か入るといいねと話していたとろこ。コロナ禍でのこの一本のメールがきっかけとなりメンバーが加わります。コロナでやり取りはデジタルで行い試作を送って進めたそうです。なんと今日初めて会うということ。こうして、CASE STUDY 07の発表となりました。
エピソードを語る加藤氏(右)と芦沢氏(左)
話をお聞きして、フォスタースタジオのシンプルな本質的さが感じられました。彼自身も終始この角度(ややうつむき気味)で語り、ストイックな感じです。出会うべくした出会い、だったのでしょう。
The Foster Retreat
Foster Retreatは、フォスター夫婦所有のプライベート空間。ノーマン・フォスターファウンデーションが建築・設計を手掛けています。ここに、NF コレクションが加わりました。「人にとって、静的で健康な物。人の五感に訴えるものを作りたい」。その思いからThe Foster Retreatの家具は作られています。
木の美しさが際立っています。オーク材。明るい色の中に暖かさが宿っています。
継ぎ目を感じさせないなめらかな質感。布張りがフレームにすっきり収まり精巧さが伝わります。
カリモクコモンズ東京
プレスプレビューは、カリモクコモンズ東京で行われました。一軒家に、シーン毎に家具が置かれています。窓側の、日本らしい決して開けているわけではない都会の日常の風景。そんな戸建てに、心地よい家具が収まる。
家具が作る空間。心地よく健康的で、味わいあるひとときが感じられました。ここで過ごし、場に合わせた家具が作る時間という発想が、少しわかった気がします。
カリモク「使い続けるというサステナビリティ」、芦沢氏「アップサイクルって何?」の記事はこちら☞https://www.houzz.jp/ideabooks/129703874/list
砧テラスのインテリアのリノベーション。芦沢氏の声がけでこれを芦沢啓治建築設計事務所とノームアーキテクツが行いました。構成する要素として、12タイプのテイラーメイド家具が制作されます。これらが 最初のカリモクケーススタディ・コレクションです。砧テラスの空間特性、中庭の自然へと流れをつなぐデザインとなりました。
ノームアーキテクツ
ここでは、デンマークと日本が共通して持つものを追求して家具が作られました。伝統あるクラフトマンシップと時代を超えた美しさの追求です。こうして、ノームアーキテクツによるNシリーズ”の9タイプの家具が作られています。
芦沢啓治建築設計事務所
空間に快適ながらも、心地よい緊張感を持たせることを意識。素材そのものの良さを引き出し、活かすことで、バランスを総合的に取ることが重要。こうして、Aシリーズの3タイプの家具が芦沢啓治建築設計事務所により作られました。
Norman Foster卿
Foster+Partnersの創設者。サステナビリティに根差した建築・都市デザインの世界的に活動。50年以上にわたり幅広い作品を提供しています。フォスター卿夫婦のプライベート空間のため、NFコレクションが加わりました。
最小のもので、最大を成す
ハングリーであれ、愚直であれ。伝説のスティーブジョブスのスタンフォード大学卒業式のスピーチ。これは、宇宙船地球号の概念を提唱し、人類と地球の調和を説いたバッックミンスター・フラーの言葉から来ています。
宇宙船地球号
フラーは、デザイナーであり思想家です。幾度も失敗をしますが「ハングリーであれ、愚かであれ」と語り、生涯発明とチャレンジ繰り返します。現在のドームの基となるジオデシック・ドーム。リプロダクトが可能なダイマクション・ハウス。トラス構造などを発明。「より少ないもので、より多くを成す。そうすれば、多くの人を物質的に有利にし、貧困の人々にも届けられる」。今の時代を先読みしたかのような発想の持ち主で、「宇宙船地球号」を提唱したことでも知られています。
1968年に始まる「ホールアースカタログ:全地球カタログ」はこのフラーの思想を元にしていました。「環境と調和した新たな生き方に役立ち、それでいてクール」なものを掲載。250万部のベストセラーとなり、最終号の裏表紙にはフラーの言葉「ハングリーであれ、愚かであれ」が掲載されました。
その廃刊パーティで、最も奇抜なアイディアに売上全て与えることになりました。全部燃やすというアイディアに贈られ、実際は燃やされずアマチュアコンピュータークラブ設立資金に充てられました。ジョブスはここで、スティーブ・ウォズニアック(ウォズ)と出会い、アップルへと繋がります。
ノーマン・フォスター卿
ジョブスは最後にアップル社の新社屋を計画します。それが、ジョブスが世界で最も依頼したい建築家であったノーマン・フォスター氏でした。ノーマン・フォスター氏は、12年間バックミンスター・フラーの元で学んでいます。ここで、自らの「最小のもので、最大を成す」の礎が築かれました。
澄んだ心で考える Think Different
「あらゆる人にして欲しいのは、澄んだ心で考えること。捨て去った願いや好奇心を呼び起こそう」フラーはこう語りかけています。
「Think Different-愚か者と呼ばれる人々が、ほんとうに世界を変えているのだから」。ジョブスが作ったアップルの広告はそう語っていました。そこにあの「宇宙船地球号」を提唱したフラーも登場していました。
フラーの最小のもので最大を成す思想が、サステナビリティに根差したフォスター氏の建築へと繋がっています。
フォスター氏によるアップルの社屋は、宇宙船のようと評されます。それは、最先の物で、再生可能エネルギーで可能するものでした。