慈恵大学病院 外来棟新築

慈恵大学病院の新築工事が完了ましした。そこで、新たに生まれた外来棟を探検してみましょう。

外来診療を担ってきた旧外来棟は、竣工1961年という。なんと長い間、救急も含め、外来患者を受け入れてきたことでしょう。中に入ると、とにかくいつもごった返していました。2012年に西新橋キャンパス再整備タスクフォースとして、耐震や減築を含む多くの工事が着工されました。工事は知っていたが、2020年の秋にできた慈恵大学病院の、さま変わりにびっくり。

何回か訪れ家具や照明、サインなどを観察(笑)。光や素材につて撮りためたのでご紹介します。

形の異なる家具

先ず、外国で見るような、ホールに使用されるタイプが異なる家具が目を引きます。

何度も見に行っていますが、利用はあまりされていないよう。配置がいまいち落ち着かないように感じます。最近の外来患者は多くが家族に付き添われて来院が多いようです。オープンタイプのデザインも良かったかと思います、もう少し小ユニットでかたまり感があり、全体にまとまるが感じられる配置。腰掛ける人が守られるような落ち着きを出せば良かったのではと感じます。

大学病院だけあって、待つ時間はかなり長いです。本やスマホを見たりできるスペースがあるといいですね。ここでは面白い違う形の椅子を取り入れています。利用者目線で思えば、視線が気にならないミドルバックの4人掛けユニットなどもよいと思う。ラウンドが多用されているのは良いと思う。角度をつけて置いて視線が交差しにくいように小ユニットで配置し、今使っているような元気色のオープンタイプのたまご型スツールと合わせ、空間に表情をつけてもよかったように感じます。

照明計画

照度は全体にかなり抑えられています。必要な箇所に照明を補い、とてもいい配灯に感じます。明るすぎないで落ち着く。要所にシーリングの面光源を入れ、ルーバーで柔らかなグレアの少ない明かりを加えています。明るさによる人の誘導も感じられます。

ほんのりした光で、病院にありがちな恐怖心やいらいらが感じられない。サイン文字を丸い四角で囲み、光を使い明度差による視認性も良い。

検査棟の光源はアルコープにしていました。折り上げには木目を使用。改め口らしきものもありますが上手く同化させてます。このくらいの照度がいいなどと、プロが関わったであろういい感じ。

サイン計画

壁面上下に間接照明。床サインは細切れにせず、面での誘導。通常の病院だと張り紙やらサインだのがいっぱい出ています。が、ここではむしろ省力化して抑えてます。すっきりした旅館のよう。この囲いの中に、ちゃんと人が居て、検査の受付をしてくれます。

コルク?でしょうか。背の高さが程よく揃って、親しめる。手を抜いてないですね。

全体に、よくある突き出しサインがかなり少ない。大きくて遠くからもわかる光のサイン。1Fの人通りの多い廊下など、場所によっては直接ペイントで描かれてます。天井の吊下がりサインは、濃茶でなくだぶん黒い版の下地。ペイントで描かれているものは、オフホワイトの壁面に濃茶色の文字でした。色も強くならないように、そして、邪魔にうるさくならない工夫がされています。

素材について

普通は全く気付かないだろう、省力化。天井は、着色はしたかもしれないけど、あえて仕上を貼らない、素材がむき出しの構造。音の反響も少なそうで、メンテナンス性もよさそう。

バフを掛けたようなパネルが組み合わされています。遠目にはここも旅館のホールのよう。パネルは穏やかな色調のものを見切り材で納め、グリッドの大きさにも変化を付けています。アルコールや薬剤にも強そうな表装です。

エスカレーターの手摺がピカピカ。菌とかに強いゴム?感がなく、つるつる。

オリジナルのスクラッチタイル壁

オリジナルのスクラッチタイルの外壁が残されてます。釉薬を使わないマットなタイルが、陰影を出して重厚です。原料に含まれる鉄分のために赤褐色や淡黄色となる特徴が見れ興味深い。

スクラッチタイルは、煉瓦からタイルに変わる過渡期の建材。ライトの帝国ホテル旧本館は、煉瓦ではなく「スクラッチ煉瓦」が世界で初めて外壁に用いられたのだそう。関東大震災で帝国ホテル旧本館が無傷だったので、震災復興期の建築に多用されたんだそうです。慈恵大学病院も頑丈にと使われたのでしょうか。凸凹や不揃いが歴史を感じさせます。

待合の椅子

病院の会計はどこも常に混むものです。慈恵大学病院のこの待合も、ご多分に漏れず混んでます。よく見ると、一人掛けのデジタルサイネージ版の前に、ほとんどの人が密集します。テーブル付きの洒落た椅子や大きなスツールも置かれてますが、ほとんど使われていません。

建築設備でのトイレの数で、女性が長蛇の列になってしまうのに、ちょっと似てる気がします。行動がどうなるのかは、人数や動線だけでは図り切れない何かがありますね。

とは言え、この椅子があるので、昔の一列に並ぶ暗いお薬待ちの景色が、変わって見えてます。

減築もされたそうで、建物の周囲にはデッキも設けられ、カフェもあります。しかしデッキにどう出るのか、いまだに謎です。

軒天の葉模様が素敵です。外の植栽が写り込む様で、開放感がすごく感じられます。(でも、その素敵なデッキへの出方が謎なんです)。

ステンカラーはリーゾナブルで、何にでもよく合いますね。葉柄はドットで作られてます。光の反射も軽減しそうです。