サグラダファミリアは完成まで200年とも300年とも言われていました。
日本人彫刻家も手掛けた聖家族誕生の門
最初に訪れた時、「日本人がいる!」と、沢山の石工に混ざる日本人を見つけて驚きました。その後、CMを見てまた驚きます。ゴールドブレンドのCMであの方が。外尾悦郎さんです。石工として40年間。今では主任彫刻家となった外尾さんは日本に何度か帰国されています。その折に公演もお聞きしました。当初の石でなく新しいコンクリートで作っていて将来劣化が心配、と語られていました。
その後、現地をまた訪れることがあり、裏の彫刻のあまりの違いに驚きました。あらためて外尾さんが手掛けた15体の天使とガウディが存命中残した誕生の門。そのすばらしさを!誇らしく見ました。
早く進むようになった理由
今では急ピッチで工事が進められています。それというのも、3Dプリンターで模型が再現できるようになったこと。断片的だった情報をITで解析できるようになったことなどが大きな要因だそうです。そして、ガウディのシンプルな形状に対する規則性の発見が、その他の部分の製作に大きく貢献しました。
現在の主任建築家ジョルディ・ポネットさん。彼は、サグラダファミリアのシンプルな形状の規則性を発見します。ガウディが残した1/10の模型の天井までの高さは4.5m。中央部分が3m。端は2.25m。この比率は、1:2/3:1/2になります。
この比率を平面に置き換えると、入口扉から奥までが90m。左右の門が60m。入口から中央通路までが45mで、高さの比率と同じになります。柱の高さと奥行きに明白でシンプルな規則性がもたらされていたことを、ポネットさんが発見しました。こうして、図面が無い部分の大きさが分かるようになったのです。
バルセロナオリンピックの開催で、サグラダファミリアは世界中の目に留まりました。それで観光客が倍増。入場料で賄われている建設資金が各段に増え工事も進んだのだそうです。
そう聞くと、東京2020オリンピックで東京の街を見せられなかったのは残念です。日本でも開催に向けコースを見直し、塗り直しや整備が手掛けられていました。東京2020オリンピックのコースについて、色彩学会で提言発表しています。
没後100周年をめざして
2026年はガウディ没後100年に当たり、急ピッチで完成が目指されています。
最初に見た時建設に200年かかると聞き、あ、見れないのね、と思ったこと。それが今や実現可能な世の中になりました。人が作りだすテクノロジーと、行き過ぎた開発のバランス。わずか15年前には夢と思われたことが完成するスピードなのです。コロナによる中断もあり完成のゆくえが注目されています。
完成予想図は、今の1.5倍の大きさ
どうやら完成予想図は、今の1.5倍の大きさと言われています。ガウディが設計を引き継いだ時、規模が拡大されました。とは言え、今でも向かいの池まで行かないと全容が収められないくらい、巨大です。
受難の門
上が地元彫刻家作、ジョセップ・マリア・スビラックスによる受難の門です。最後の晩餐から復活までのイエスの人生の最期の記録です。カサ・ミラの屋上の煙突にこの原型が見られます。こわばったデザインのやせたイエス様。地元の批判もあるようですが受難としてガウディが思うものかも知れません。 カサミラにある像との比較を入れたました。 比較画像は ☞カサ・ミラ
サグラダファミリアは聖家族教会です。イエスと聖母マリア、そして養父ヨセフの聖家族に捧げる、罪を贖うための聖堂です。生誕の門、栄光の門、受難の門の3部から成る石に刻まれた聖書と言われます。十字架を背負うイエスの反対には、福音者として、ガウディの姿が見られます。
サグラダファミリア建設の背景
19世紀半ば、産業革命を受けバルセロナでも区画整備が進みます。1882年に聖堂の建設が始まりますが、意見の対立から建築家が辞任。若手のガウディが主任建築家となりました。
寄進による資金で建設
サグラダファミリアは、信者からの寄進で財源をまかなう贖罪教会です。ガウディは着任後、多くの人が収容できるようにとの思いから規模の拡張を加えます。資金はたびたび枯渇し建設中断の危機に見舞われます。そんな時ガウディは信者を戸別訪問し資金を集めたそうです。晩年は私財を投げ打ちサグラダファミリアの建設に専念。日課のミサに向かう途中路面電車に跳ねられた際も浮浪者と間違われるほど。それで手当てが遅れたと言います。
IT技術で140年短縮に
ガウディの死後も建設は続きますが、スペイン内戦が勃発。頼りのガウディが残したスケッチや模型が破壊されてしまいます。解読に時間を要し完成まで200年と言われるようになります。バルセロナオリンピックを機に来場者が増え資金難が解消。3D構造解析や3Dプリンターによる解読。前述のポネットさんの研究の成果などのお陰で、2026年完成を目指すようになりました。しかし、コロナで入場料が得られず資金難となり、今は2026年の完成は白紙撤回だと言われています。
サグラダファミリアの下に2006年地下鉄を通す計画が浮上しました。このやりとりで着工時の建築許可が更新されていなかったことが発覚します。130年も建設許可が失効していました。地盤を強化し地下鉄工事も行われます。2018年にはバルセロナ市当局と支払いも合意となりました。
内部は植物がアーチをつくり天に向かう
2010年に聖堂が完成。奥行き90m、巾60mでサッカーグラウンドが入る広さだそうです。内部に入ると、植物が力強く天に伸びる造形が現れます。天空からの神々しい光に包み込まれます。
ここでは、カサバトリョなどで見られるグラデーションの効果。光や色が床まで着いた時の柔らかさが感じられます。カサバトリョでは、柱に付いている丸い飾りは何なのだろう、と思っていました。ここサグラダファミリアに、その思いと全様が感じ取れます。地下に根差した植物は、節で触手を増やし、アーチを描いて広がり天へと延びています。
ガウディ建築を貫く理念は「自然と人間の調和」
大聖堂の実験はコロニアグエルの地下聖堂と言われています。柱は根で、建物を樹木として捉えた設計です。グエル公園では、木の無い禿げた山に樹木を植えて理想郷にしています。ガウディ建築を貫く理念は「自然と人間の調和」です。トカゲやカタツムリなどの森の生き物が正門に彫られています。生誕の門のモデルは実在のバルセロナの人々です。『色は形を補い生命が宿っていることをはっきりと示す』。こう語り、グエル公園を彩っています。全ガウディ建築を撮ったので、画像が出てきたらまたご紹介します。
モデルニスモの最高傑作
フランスのアールヌーボーとはまた異なる、カタルーニャらしいデフォルメの幾何学的造形。モデルニスモの最高傑作と称されます。形も美しく、自然の摂理に準じていて、すうっと入って来ます。
この祈りの柱の上部の形は、円柱を捻じった頭をカットしつないでできる幾何図形になっています。
美し色が溢れるステンドグラス
幸せな気持ちになります。とてもやさしい教会です。溢れる光の広がりが包みます。東側は赤やオレンジの暖色。西側は青や緑の寒色を基調としています。陽の差し込みでさまざまな表情を見せます。
生前ガウディは『内部は森のようになる』。『天井は神を称賛する人々を覆う大木の梁となるであろう』と語っています。聖堂内は45メートル、当初の倍の幅となり多くの人が集えます。建設資金の80%が入場料で賄われているそうです。
地下礼拝堂に始まるこれまでの建設への努力。今集う人の幸せそうな人の姿。満たされる空間です。
2021年12月についに「聖母マリアの塔」が完成しました。
向かい側にある池が撮影スポットとして知られています。写真を撮っていると、いつも建物と一緒に撮ってもらうことになります(^^ゞ。